「事業再構築補助金」とは
最高1億円(諸条件あり)というかつてない規模感の「事業再構築補助金」は、コロナ禍での影響を受けた中小企業の新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編成などを目的とした補助金です。3月16日時点でまだ公募要領が出ていないのですが、経済産業省から指針となる「事業再構築補助金の概要」なるペーパーが出ています。
・ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。
経済産業省「事業再構築補助金の概要」
・コロナの影響で厳しい状況にある中小企業、中堅企業、個人事業主、企業組合等を対象とします。申請後、審査委員が審査の上、予算の範囲内で採択します。
予算枠は1兆1485億円。事務費なども含まれると思われますが、ものづくり補助金や持続化補助金の予算規模が従前年間1,000億円、コロナ禍で拡大され2,000億〜3,000億くらいだったのがこの規模になり、インパクトが大きいことがご理解いただけると思います。
「事業再構築」とは
では「事業再構築」がどういったものか、事業再構築補助金のリーフレットに活用イメージが載っているのですが、いまいちピンときません。
基本はビジネスの根幹をなす、
「誰に(ターゲット)」
「何を(商品・サービス)」
「どのように(販売方法)」
を既存事業から「ガラッと変える」ことが前提です。
但し「当社ならでは」の強みを生かした上で、かつ市場の成長性や事業の収益性に十分な根拠がある(「合理的で説得力がある」)ことが採択条件となってきます。
また公募要領と同様のタイミングで各業界別の「事業再構築指針」が提示される予定です。
※3月17日、「事業再構築指針」がリリースされました。
主要申請要件
1) 売上が減っている
申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月(連続ではない)の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している。
(通常枠の場合。後述する「特別枠」では2021年1~3月のいずれかの月の売上高が、対前年または前々年の同月比で30%以上減少していることが条件)
2) 事業再構築に取り組む
事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・ 業種転換等を行う。
3) 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定する。
補助事業終了後3~5年で付加価値額※の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定する。
※「付加価値額」とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものを指します。
公募スケジュール
3月下旬に公募開始予定(ギリギリになりそうです)、最初の締め切りは4月中旬。令和3年度に複数回(5次くらいとも)実施する予定となっています。
支援対象(応募可能対象)
中小企業:個人事業者を含む、中小企業基本法の定義による規模の事業者
製造業他: 資本金3億円以下の会社 又は 従業員数300人以下の会社及び個人
卸売業: 資本金1億円以下の会社 又は 従業員数100人以下の会社及び個人
小売業: 資本金5千万円以下の会社 又は 従業員数50人以下の会社及び個人
サービス業: 資本金5千万円以下の会社 又は 従業員数100人以下の会社及び個人
・大企業の子会社等の、いわゆる「みなし大企業」は支援の対象外。
・直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える場合は、上記範疇でも中堅企業として取り扱う。
・企業組合、協業組合、事業協同組合や収益事業を行うNPO法人も支援の対象
中堅企業:「中小企業」以上の概ね資本金10億円未満の会社(調整中)
補助額
通常枠
中小企業:100万円~6,000万円 補助率 2/3
中堅企業:100万円~8,000万円 補助率 1/2(4,000万円超は1/3)
※よく聞かれるので補足しますと、「補助率2/3」は9,000万円の取り組みに対し、6,000万円補助されるというものです。
また別途この機会に大きく事業拡大を目論む事業者向けの枠もあります。
中小企業から中堅企業へ向かう「卒業枠」400社限定(→max400億円)
6,000万円~1億円 補助率 2/3中堅企業向け「グローバルV字回復枠」100社限定(→max100億円)
8,000万円超~1億円 補助率 1/2
緊急事態宣言特別枠
今回、緊急事態宣言の影響で深刻な影響を受けた企業向けに「特別枠」も提示されています。
これはどちらかといえば早々の対応が必要となる(持続化補助金くらい?)事業者向けの内容になっています。
令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が、対前年または前々年の同月比で30%以上減少している事業者。
従業員数 補助額
5人以下 100万円~500万円
20人以下 100万円~1,000万円
21人以上 100万円~1,500万円
補助率:中小企業:3/4 中堅企業:2/3
「特別枠」で不採択となった事業者については、加点の上、通常枠で再審査
「特別枠」の要件を満たせば、「通常枠」のみ応募した際も加点措置
事務費を除き補助金に当てられる額が1兆円と想定すると、ざっくり
9,500億円÷3,000万円(中間値)≒ 約2〜3万者が採択の可能性があると言えます。
追記:大体5万者くらいを想定しているようです。
補助対象経費
主要経費→設備投資関連
建物費(建物の建築・改修に要する経費)→不動産取得は対象外、また事業での必要性も審査対象
建物撤去費、設備費、システム購入費、リース費
関連経費→付随経費
●外注費(製品開発に要する加工、設計等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)
●研修費(教育訓練費等)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
●クラウドサービス費、専門家経費
※額面か割合で上限が設けられる予定
補助対象外
人件費、旅費、他の事業に流用可能なもの(パソコン類、自動車類)
原材料費、消耗品費、水道光熱費、通信費
事業計画に含めるべきポイント→審査項目
●現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性
(↓上記をもとに)
●事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)
●事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法
(勝ち目がある)
●実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)
(事業期間内に実施できるかどうか、事業終了後の収益性)
・再構築の必要性、地域経済への貢献、イノベーションの促進なども審査項目に加味される可能性があると記されています。
また「ローカルベンチマーク」の要素が入るとのことです。
「ローカルベンチマーク」は経済産業省が提供している、財務指標に加え、ビジネスモデル、業務フローや商流、内部・外部環境などを整理して金融機関との対話の切り口として使うことを目的にしたツールです。
つまり、自社の内外の現状をきちんと把握した上で、事業計画が立案されているかどうかが問われそうです。
補助金活用にあたって留意すること
全ての「補助金」に言えることですが、
・事業実施は交付決定日以降→契約や支払はこの日以降。時系列で取引証票を求められます
(第1次募集のみ「事業着手承認制度」により、応募前に届出があれば2/15まで訴求可能、2次以降は未定)
・補助金の交付は事業終了後(繋ぎ資金の目処も審査の対象)
補助額3,000万円以上は金融機関と連携した事業計画が必要(金融機関が認定支援機関であれば要件はOK)
・フォローアップが必要
事業実施後、5年間年次報告の義務(事業化の進捗、経営状況、資産管理状況、会計監査への対応など)
(卒業枠、グローバルV字回復枠では中堅企業化や付加価値額達成に一定のコミット、実現できない場合は補助金の一部返還を求められる可能性)
・全て電子申請のみ
「GビズIDプライム」の取得が必要(3週間ほどかかる)
法人・個人事業主ともに印鑑証明書が必要になる
まずはGビズプライムIDの取得とローカルベンチマークを眺めてみて、計画の素案を練ってみると良いと思います。
また続報が入り次第、追記してゆきます。
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