【事業再構築補助金】「事業再構築指針の類型」を読み解く

新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換???

事業再構築補助金の応募にあたり、事業再構築の「類型」を選択し、それに合った要件を満たす計画であることを示す必要があります。
(事業再編はこれらの類型のいずれか+組織再編となります)
主たる事業を変更するとか、しないとか、業種を変更せずに事業を変更するとか、わけが分からなくなりそうだったので整理してみました。

どの程度売上を「再構築」するか

事業再構築類型

ざっくり結論から言うと、事業再構築の結果、
売上構成比が新事業が一番多くなる
↓YES
全く分野が違う
 →YES 業種転換(標準産業分類の大分類、製造業→卸小売業)
 →NO 事業転換 (標準産業分類の中分類〜細分類、飲食業は変わらず、焼肉屋→ラーメン屋)
↓NO
新しい商材で新しい顧客を開拓する
 → 新分野展開
↓NO
製造方法、提供方法を変える
 → 業態転換
となりそうです。

※初出時、業種転換と事業転換が逆になっていたのを修正しました。

「思い切った大胆な事業の再構築」「選択と集中」が審査ポイント

但し審査項目の(3)再構築点の①で「全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか」とあり、配点は事業転換 ≒ 業種転換 > 新分野展開 > 業態転換 となることが予想されます(配点要素の1項目になると思われますが)

また、③で「市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取組であるか」ともあり、「新しいものを加える」と言うよりは「寄せてゆく」事業にフォーカスされていることもわかります。

類型ごとの例を読み解く

業種転換

(賃貸業)

レンタカー事業を営んでいる事業者が、新たにファミリー向けのコロナ対策に配慮した貸切ペンション を経営し、レンタカー事業と組み合わせた宿泊プランを提供することで、3年間の事業計画期間 終了時点において、貸切ペンション経営を含む業種の売上高構成比が最も高くなる計画

(参考)日本標準産業分
【大分類】…K不動産業、物品賃貸業 …M宿泊業,飲食サービス業…(レンタカー事業は物品賃貸業、ペンションは宿泊業)

出典:経済産業省 事業再構築補助金 事業再構築指針の手引き(以下同様)
  • 貸切ペンション経営を営んだことがない(①-1)
  • 新たに建物改修等が必要(①-2)
  • 提供するサービスが異なり、定量的に性能又は効能を比較することが難しい(①-3)
  • 貸切ペンション経営を始めたことで、レンタカー事業の需要が代替され、売上高が減少するといった影響が見込まれない(むしろ相乗効果により増加する)(②)
  • 3年間の事業計画期間終了時点において、ペンション経営を含む業種の売上構成比が最も高くなる計画を策定(④)

※各要件の採番は「【事業再構築補助金】事業再構築指針2.0版がリリース(3月29日付)」の要件整理表に準じます。

(製造業)

コロナの影響も含め、今後ますますデータ通信量の増大が見込まれる中、生産用機械の製造業を 営んでいる事業者が、工場を閉鎖し、跡地に新たにデータセンターを建設し、5年間の事業計画期間終了時点において、データセンター事業を含む業種の売上高構成比が最も高くなる計画

(参考)日本標準産業分類
【大分類】…E製造業、 …G情報通信業…(データセンターは情報通信業)

  • データセンター事業を営んだことがない(①-1)
  • 新たにデータサーバの購入等が必要(①-2)
  • 異なる製品(サービス)であり、定量 的に性能又は効能(強度や軽さ等)を比較することが難しいことを示す(①-3)
  • 新たにデータセンター事業を始めたことで、生産用機械の需要が代替され、売上高が減少するといった影響が見込まれない(②)
  • データセンター事業を含む業種の売上構成比が最も高くなる計画を策定(④)

1番インパクトはあるのですが、V字回復に向けた強みの活用などの説明が難しそうです(相乗効果が期待できれば良いのですが、食い合ってしまうのはNG)

事業転換

(飲食サービス)

日本料理店が、換気の徹底によりコロナの感染リスクが低いとされ、足元業績が好調な焼肉店を 新たに開業し、3年間の事業計画期間終了時点において、焼肉事業の売上高構成比が、 標準産業分類の細分類ベースで最も高い事業となる計画

(参考)日本標準産業分類 【大分類】M宿泊業、飲食サービス業⇒【中分類】76飲食店⇒【小分類】762専門料理店 ⇒【細分類】7621日本料理店…7623中華料理店、7624ラーメン店、7625焼肉店…(細分類ベースで事業転換)

  • 焼肉店を営んだことがない(①-1)
  • 新たに卓上備え付けのロースター等の設備や内装の改装などが必要(①-2)
  • 商品が異なり、定量的に性能又は効能 を比較することが難しいことを示す(①-3)
  • 大衆向けの日本料理店が高価格帯の焼肉店を始め、異なる顧客のニーズに応えるもの、売上高が減少するといった影響が見込まれない(②)
  • 焼肉事業の売上構成比が、日本標準産業分類細分類ベースで最も高くなる計画を策定(④)

(製造業)

プレス加工用金型を製造している下請事業者が、業績不振を打破するため、これまで培った金属 加工技術を用いて、新たに産業用ロボット製造業を開始し、5年間の事業計画期間終了時点において、産業用ロボット製造業の売上高構成比が、日本標準産業分類の細分類ベースで最も高い事業となる計画を策定している場合

(参考)日本標準産業分類 【大分類】E製造業⇒【中分類】生産用機械器具製造業⇒【小分類】269その他の生産用機械・同部分品製造業 ⇒【細分類】2691金属用金型・同部分品・附属品製造業…2694ロボット製造業…(細分類ベースで事業転換)

  • 新たに製造する産業用ロボットが、過去に製造した実績のない部品(①-1)
  • プレス加工用金型専用の生産設備とは異な る専用の生産設備が新たに必要であり、当該設備を導入(①-2)
  • 異なる部品のため、定量的に性能又は効能(強度や軽さ等)を比較することが難しいことを示す(①-3)
  • プレス加工用金型の需要が代替され、売上が減少することは見込まれない(②)
  • ロボット製造業の売上構成比が、日本標準産業分類細分類ベースで最も高くなる計画を策定(④)

これが強みなどを活かす上で1番しっくりする気がしますが、売上構成比を1番大きくするくらい再構築しなければならないので、かなり戦略的になってきます。

新分野展開

(製造業)

航空機用部品を製造していた製造業者が、業界全体が業績不振で厳しい環境下の中、新たに医療機器部品の製造に着手し、5年間の事業計画期間終了時点で、医療機器部品の売上高が 総売上高の10%以上となる計画

  • 過去に製造した実績のない部品(①-1)
  • 航空機専用の生産設備とは異なる専用の 生産設備が新たに必要であり、当該設備を導入(①-2)
  • 定量的に性能又は効能(強度や軽さ等)を比較することが難しいことを示す、もしくは性能(強度や軽さ等)を比較することが可能な場合には、差異を定量的に説明する(①-3)
  • 用途が異なり、売上が減少することは見込まれない(②)
  • 医療機器部品の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定(③)

(不動産業)

都心部の駅前にビジネス客向けのウィークリーマンションを営んでいたが、テレワーク需要の増加を踏まえて、客室の一部をテレワークスペースや小会議室に改装するとともにオフィス機器を導入し、3年間の事業計画期間終了時点で、当該レンタルオフィス業の売上高が総売上高の10%以上となる計画

  • レンタルオフィス業を営んだことがない(①-1)
  • 新たに客室の改装やオフィス機器の導入が必要(①-2)
  • 提供するサービスの種類が 異なり、定量的に性能又は効能を比較することが難しい(①-3)
  • レンタルオフィスを始めたことで、ウィークリーマンションの需要が代替され、売上高が減少するといった影響が見込まれない(②)
  • レンタルオフィス業の売上高が 総売上高の10%以上となる計画を策定(③)

売上構成は主力を凌ぐほどではないけれども、新しい商材(何を)、顧客(誰に)を開拓する取り組みになります。インパクト出すためには相乗効果で現業の売上も伸ばせるような施策が必要そうです。

業態転換

(ヨガ教室)

ヨガ教室を経営していたところ、コロナの影響で顧客が激減し、売上げが低迷していることを受け、サービスの提供方法を変更すべく、店舗での営業を縮小し、オンラインサービスを新たに開始し、オンラインサービスの売上高が3年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%以上を占める計画

  • オンラインサービスを営んだ実績がない(⑤-1)
  • 新たに配信機材等を導入する必要がある(⑤-2)
  • 1回当たりの提供コスト等、生産効率がどの程度改善しているか等を示す(⑤-3)
  • オンラインサービスの売上高が、総売上高の10%以上となる計画を策定(③)
    (商品の新規性要件)例えば、ヨガに加えて、新たにエアロビクスを始める場合
  • 過去にエアロビクスのサービスを提供したことがない(①-1)
  • 新たに大型ミラーの設置や防音設備等が必要(①-2)
    →⑤は提供方法に対して、①は提供サービスに対してと思われます
  • ヨガとエアロビクスは、異なるサービスであり、定量的に性能又は効能を比較することが難しいことを示す(①-3)
    (or設備撤去要件)
  • 店舗の営業を縮小するに際して、既存設備を撤去する(⑥)

(製造業)

健康器具を製造している製造業者が、コロナの感染リスクを抑えつつ、生産性を向上させることを 目的として、AI・IoT技術などのデジタル技術を活用して、製造プロセスの省人化を進めるとともに、削減が見込まれるコストを投じてより付加価値の高い健康器具を製造し、新たな製造方法による売上高が、5年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%以上を占める計画

  • 今回導入しようとしているAI・IoT技術などのデジタル技術を活用した省人化による方法で、製品を製造した実績がない(⑤-1)
  • AI・IoT技術などのデジタル技術に関する専用の設備が新たに必要(⑤-2)
  • 新たに導入した製造方法により、1個当たりの製造コスト等、生産効率がどの程度改善しているか等を示す(⑤-3)
  • これまでに製造した健康器具と同じ健康器具ではない(①-1)
  • 既存プロセスのコストを抑えるため、省人化に関するAI・IoT技術などのデジタル技術に関する専用の設備が新たに必要であり、当該設備を導入(①-2)
  • 新たに製造する健康器具と既存の健康器具との性能(健康効果等)の違いを説明する(①-3)
  • 新たな製造方法で製造した新たな健康器具が、総売上高の10%以上となる計画を策定(③)

「誰に、何を、どのように」の「どのように」の部分(製造方法・提供方法)を変える取り組みです。
一番これが取り組みやすそうですが、インパクト(売上拡大の根拠)をどのように出すのかが勝負どころになりそうです。
また製品の場合は主要製品設備の製造方法の変更が①も⑤も当てはまりますが、サービス業の場合だと「サービスの提供方法」と「サービス」自体両方に何らかの設備投資が必要と読み取れます。

読み解いているうちに、「業態転換」は「コロナ特別枠」への配慮のような気がしてきました。スピード感ある取り組みであることや切羽詰まっていることをどう示せるか、にかかってきそうです。